The Northern Spirits

北に未来あり

月別: 2017年1月

冬のガイド オオハクチョウ

冬のガイドは日の出前から一日が始まる。いつもはタンチョウたちの寝ぐらである音羽橋へ直行するのだが、先日、朝一で白鳥の越冬地である湖へ行くことがあった。そこに着くと、怪我をした白鳥が一羽だけいた。仲間は他の場所で夜を越しているらしい。ここにいる白鳥は「オオハクチョウ」だ。シベリアの厳しい冬を逃れ、南へ移動してきた。もっと南までいけばいいのに、飛ぶ体力の節約なのか、「ここでいいや」と、この寒い土地での越冬を決めたものたちだ。

怪我をしたオオハクチョウの存在には気付いていたが、特に私は何の対処もしなかった。するとMakoto Ando氏は、ここを管理&オオハクチョウへの給餌を続けて数十年にもなるO氏に怪我のことを伝えていた。ほどなくして町の職員、獣医らしき人が現れた。気付いていたのに動けなかった自分を恥じた。

安藤氏の書斎にある一冊の本の存在を思いだし、自分でも注文することにした。竹田津 実さんの「ハクチョウ」(アリス館)だ。北国からの動物記といシリーズで他にもキタキツネやオジロワシなども発刊されている。1937年、大分生まれの竹田津氏は1963年より道東の小清水町 家畜診療所勤務となり、傷ついた野生動物の保護、治療、リハビリ作業をボランティアで行いながらキタキツネの生態調査をしていたという。この本の文章、写真からは竹田津氏の「愛」が溢れている。

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 「ハクチョウはハクチョウ。キツネはキツネ。」というふうに人間たちはカテゴライズしてしまう。オオハクチョウの嘴(くちばし)は黄色と黒色の二色だ。ところが色や面積や形がそれぞれみんな違う。人間だって性別、年齢、性格、顔など同じものがないのと同じことだ。自然をそういった視点で観察すると本当に愛着が湧いてくる。早起きは三文の徳というが朝から自然にたくさん学ばせて頂いた。

ところでヒッコリーウィンドで定期購読している新聞がある。「みやざき中央新聞」だ。1/23付けの記事で心に残る言葉があった。

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友常貴仁氏の本の冒頭。

「朝を制する者は一日を制する。
一日を制する者は一年を制する。
一年を制する者は一生を制する。」

ちなみに「制する」とは、物事が自分の思った通りになることだ。続けて記事にはこうある。人生にはさまざまな辛苦が訪れる。それらに対して不退転の決意で対処しなければ人生を制することは出来ない。すなわち「強い心」である。子供時代、家の貧しさのため、幼い頃から働いて家計を助けていたとか、スポーツや武道で心身を鍛えられていたとか、そういう厳しい環境に置かれていた子は「強い心」が培われる。では、大人になってから「強い心」を育むにはどうしたらいいのだろう。

二つある。一つは大きな失敗や挫折を経験し這い上がることだ。もう一つは「早起き」だ。あの温かく心地よい布団の温もりの中に少しでも長くいたいという欲望をはねのけるためには、どうしても「強い心」が欠かせない。「早起きすると決めたら実行する強い心がいる。それを続けていると強い心が育つ」と友常氏。

足かけ17年の年月をかけて日本列島を測量し、日本地図を完成させた伊能忠敬は毎朝、日の出に手を合わせ、「命尽きるまで世に残すことをさせてください」と祈っていた。かの西郷隆盛は目が覚めた瞬間、布団を蹴り上げていたそうで、この起き方を「西郷式朝起き法」というそうだ。それにしても、世界広しといえども元旦の初日の出に手を合わせる民族は日本人くらいである。(みやざき中央新聞 魂の編集長 水谷謹人氏)

(※友常貴仁氏について…敏達天皇の後裔『橘諸兄の遠孫』と名乗りを上げる家柄で、聖徳太子以来の精神を一子相伝で守り続ける日本古来よりの名門に生を受ける。日本古来の伝統に基づく、古代からの極秘儀式を継承し、礼法・香道・茶道・歌道から剣術・弓術と日本文化 文武百般の奥義を一人の身に修めるという非常の家系。)

「みやざき中央新聞」を読みたい方はぜひ、ヒッコリーウィンドにいらして下さい。

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※小川氏と写るオオハクチョウは怪我をしているものではありません。

高校生のフィールドワーク実習

 福岡県立柏陵高等学校の環境科学コース2年生、約50名がフィールドワーク実習の一環として鶴居村を訪れて下さった。

去年の実習の様子はこちら。猛吹雪の中、厚岸へ向かうという凄まじい体験だった。
http://kentacamera.net/…/%E7%8C%9B%E5%90%B9%E9%9B%AA%E3%81…/

 今回、私は実習の講師を務めるMakoto Ando氏のアシスタントとして同行させて頂いた。実習場所はタンチョウの寝ぐらとして有名な音羽橋。

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 環境の保全に配慮した望ましい働きかけのできる技能や思考力、そして判断力を身につけるために勉強している学生に対し、氏がどのような講義をするのか私自身も楽しみであったが、
「ここの川を見て気付くことはない?」
「自然の川の条件ってなに?」など、学生に質問を投げかけることで、学生たちの参加意識がどんどん高まっていくのを感じた。タンチョウも良いタイミングで私たちの真上を飛翔し、学生たちも感嘆の声をあげていた。

野外実習後は場所を変えて、ヒッコリーウィンドへ。安藤氏の道東の自然写真を見せながらのスライドショー講義と、昼食のため。2ヶ月前にオープンしたてのギャラリーに入ると皆、圧倒されていた。イタリア製のバイクに見入る男子、愛らしいキタキツネの写真の前で立ち止まる女子、各々に楽しんでいる様子。講義が始まり、氏が写真の一枚一枚に込められたストーリーを解説した。学生たちは真剣そのもの。これがきっかけで、この中でネイチャーガイドという職業に憧れ、その道を志す若者も出てくるかもしれない。

昼食はヒッコリー特製お弁当。

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本物を食べてほしいという安藤 忍さんの願いから、一品一品、下ごしらえからかなりの時間をかけて作られた。約50人分のお弁当に、北海道産ジャガイモを使用したポテトフライ、野菜スープ。皆、お腹がすいていたからだろうか、黙々と食べていた。忍さん曰く、「11月のオープニングセレモニーでお弁当150人分を仕込んだ経験があったから、今回の50人分のお弁当はそれほど大変では無かった。」との事。そんなセリフをさらりと言ってしまう忍さんだが、この日のためにメニューの考案や食材の買い出しなど奔走する姿を見ていたので背中で学ばせてもらった。一見、大変と思える仕事でも受け取り方によっては自分の人生にプラスにも作用するし、嫌々やっていてはマイナスに作用してしまう。この発想の違いにより「生き方」が変わるのだろうと感じた。

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 2012年から始まった柏陵高等学校の鶴居での野外実習は今年で6回目を迎える。ある一人の教諭が安藤氏の熱烈なファンで、その教諭が2015年を最期に退任した後でも、鶴居での実習は伝統として続いている様だ。人を動かすのは「感動」や「情熱」であると、日頃から師に説かれているが、それを目の当たりにした想い。彼のスピリットが柏陵高等学校に残ったのだろう。

ところで柏陵の「柏」という文字。カシワというブナ科の樹木の事だが、翌年に新芽が出るまで、たとえ冬でも古い葉が落ちない特性から「代が途切れない」「子孫繁栄(家系が途切れない)」という縁起物とされ、また、葉には芳香もあり、柏餅を包むのに用いられるそう。なるほど柏陵高等学校の教諭の「スピリット」は途切れていない。やはり、人の心を動かすのは「情熱」しかない。

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エゾフクロウが教えてくれたこと

今日は森へエゾフクロウ探しに行った。フクロウの姿や形は知ってはいるが、見たことは無いという人がほとんどではないだろうか。ましてや野生のフクロウなら尚更だ。フクロウは「福来郎」「不苦労」などどいった縁起の良い字が充てられ、「福が来る」「苦労がない」と願い、縁起物として愛されてきた。バードウォッチャーならずとも一度は見たい可愛いらしい鳥である。

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しかし、いつでも見られるとは限らないのが野生の常。例に漏れず、今日のガイドで訪れた森のフクロウはお留守だった。普通ならば「いつもは、あのミズナラの穴にいるんですけどね。今日は見られませんでした。」と、なるはずだが、転んでもただでは起きないのが我々のチーム。

「じゃあ、この森のストーリーを毛利から解説してもらいます。」

 結論から言うと、、、出来なかった。登山が趣味で山や自然に慣れ親しんできたつもりだが、自分は森のことをまだ何も知らない。例えば樹種のお話だと、その森にはミズナラ、シラカバ、キハダの他にカラマツがある。カラマツは北海道に自生しないので、植林された形跡=人の手が加えられた森ということが分かる。ちなみにカラマツは北海道の発展に大きく貢献してきた樹木である。漁業ではニシンを入れるトロ箱。酪農では牧場の柵に使われ、また炭坑にも利用されたそうだ。

昨年、大きな台風が三度この道東に上陸したが、その際に根こそぎ倒れたカラマツがある。北海道の厳しい環境では樹木がしっかり根を張るのにも時間が必要だ。我々の常識だと大地の上、地球の表面上に樹木が「立っている」という認識だが、北海道の先住民・アイヌの価値観はまるで違う。樹木の根っこが大地を「支えてくれている」という認識だ。このようにカラマツだけでもこんなにストーリーがある。

※写真のエゾフクロウは、以前に撮影したもの。15940653_1404754882910634_7194431119189266506_n

最低気温マイナス22.1℃

今日の鶴居は最高気温マイナス6.5℃、最低気温マイナス22.1℃だった。今年は例年に比べて最低気温がマイナス20℃を下回る日が多い。しかも、12月のうちからだ。この地域ではスタッドレスタイヤを装着する時期は11~5月だ。つまり1年の半分は「冬」に定義される。

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長く、厳しい冬。しかし、厳しい環境だからこそ生命がいっそう輝く季節でもある。そんな野生動物の輝く生命を一目見ようと、毎年冬にはたくさんの観光客がこの村を訪れる。冬のガイドこそヒッコリーウィンドの真骨頂なわけだが2回目の冬を迎えるに当たり、目標を改めることにした。自分のことはさておき、今年は「人のため」にどれだけ動けるか、を心掛けたい。また、新たな研修生も続々と来始めており、ありがたいことに彼ら指導させて頂く立場にある。自分が物事の本質を理解していないと、教えるという行為に説得力が生まれない。教えるということは自分の学びでもある。

ところで「学ぶ」という言葉の語源は「真似る」という説もあるらしい。師匠、先輩の行動や思考を真似て、自分のものにしていく。良い師匠についた事は自分にとってとてもラッキーな事だけど、今度はそのバトンを次へと渡して行かなければならない。言葉でなく、背中でも教えられるよう、身を焦がして業務に取り組む決意を胸に1月後半戦も頑張りたいと思う。

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冬、到来

今日の鶴居は最高気温マイナス6.5℃、最低気温マイナス22.1℃だった。今年は例年に比べて最低気温がマイナス20℃を下回る日が多い。しかも、12月のうちからだ。この地域ではスタッドレスタイヤを装着する時期は11~5月だ。つまり1年の半分は「冬」に定義される。

長く、厳しい冬。しかし、厳しい環境だからこそ生命がいっそう輝く季節でもある。そんな野生動物の輝く生命を一目見ようと、毎年冬にはたくさんの観光客がこの村を訪れる。冬のガイドこそヒッコリーウィンドの真骨頂なわけだが2回目の冬を迎えるに当たり、目標を改めることにした。自分のことはさておき、今年は「人のため」にどれだけ動けるか、を心掛けたい。また、新たな研修生も続々と来始めており、ありがたいことに彼ら指導させて頂く立場にある。自分が物事の本質を理解していないと、教えるという行為に説得力が生まれない。教えるということは自分の学びでもある。

ところで「学ぶ」という言葉の語源は「真似る」という説もあるらしい。師匠、先輩の行動や思考を真似て、自分のものにしていく。良い師匠についた事は自分にとってとてもラッキーな事だけど、今度はそのバトンを次へと渡して行かなければならない。言葉でなく、背中でも教えられるよう、身を焦がして業務に取り組む決意を胸に1月後半戦も頑張りたいと思う。

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