The Northern Spirits

北に未来あり

月別: 2018年7月 (Page 1 of 3)

Nature’s Best Photography Asia 2018 授賞式

昨日、東京でNature's Best Photography Asia 2018 の授賞式が行われた。ヒッコリーウィンドから安藤さん、小川のW受賞で、ふたりは同じ舞台に上がった。忍さんからその様子が送られてきてリアルタイムで感動を共有させてもらえた。


ヒッコリーウィンドではご宿泊のお客様がいらっしゃり、忍さんが準備をしてくださったおかげで御食事の準備など段取りに困らなかった。ヒッコリーウィンド特製カレーで、子供たちは何杯もおかわりして御家族に喜ばれた。食事後、佳奈ちゃんがヒッコリーに荷物を取りに来るという名目で顔を出してくれた。おそらく自分を気遣っての行動だろう。感謝。ひとりでいると、普段からお世話になっている上司、仲間のありがたさがよく分かる。

釧路市中央図書館7階で開催中の松浦武四郎展へ行ってきた。限られたスペースに所狭しと並べられた展示の数々は、久摺日誌などからピックアップされた釧路・阿寒・弟子屈と普段馴染みのある場所ばかり。


それは、地元でガイドをしている塩 博文さんというフィルターを通して見た松浦武四郎の世界。武四郎の描いた阿寒と塩さんの写真の比較があったり、この展示は塩さんだからこその展示。塩さんの釧路愛、武四郎愛を感じました。

塩さんになぜこの展示の開催を決めたのか聞いたところ、「武四郎の創造性などを通して、彼のスピリットを伝えたい」と。自分の身の回りの諸先輩方が口にする共通する言葉。「スピリット」。知識や技術だけでなく、そこに哲学やスピリットが無いと継続できない、といつも安藤さんも語っている言葉。
spirit 心[気]構え;気風,気性,精神,魂

という意味がある。なるほど、松浦武四郎氏と安藤誠氏、同じ匂いがするのも頷けた。

HICKORY WIND ウェブサイト
http://hickorywind.jp/

クロヅル

本州から北海道に来るとどうも距離感覚があまり掴めないらしい。カヌーガイドを午前中にし、昼からレンタカーで帯広まで所用のため向かうお客様がいた。鶴居からだと往復5時間。帯広ならまだ良いが、当初は根室の納沙布岬まで行くつもりだったという、、、運転に自信があっても同じ道東だが無理は禁物。移動だけで一日が終わります。余裕を持った旅計画、余裕を持った運転を。安全第一。

一昨日、北海道博物館で岩橋 英遠という日本画家による「憂北の人」という屏風を見てからクロヅルのことが頭から離れない。本来九州に冬の時期のみ、たった数羽だけ渡って来る渡り鳥だが、昨年はうっかり鶴居村に来てしまい、しかも鶴居村で越冬してしまった。春はよく村内で見かけたが最近は見ない。今は標茶にいるのだろうか。気がかりだ。

写真・スワロフスキーのフィールドスコープとスマートフォンで撮影のクロヅル

「幕末維新を生きた旅人 松浦武四郎 ー見る、集める、伝えるー」

北海道博物館で開催中の特別展「幕末維新を生きた旅人 松浦武四郎 ー見る、集める、伝えるー」へ。2018年は北海道命名150年、武四郎生誕200年という節目の年である。
※ネタバレも含むので札幌、帯広、三重の会場へ行く予定の方は注意です。

武四郎は北加伊道(オリジナル表記。命名当時は【海】ではない。)の名付け親である。加伊=カイとは、カイナが語源。天塩川探査の途中、武四郎はオニサッペ(天塩川の支流・筬島の鬼刺川付近)で故事に詳しいアイヌのアエトモ長老からこんな話を聞いた。カイナの「カイ」とは、この国(北海道)に生まれた者ということで「ナ」とは貴人をさす尊敬の言葉である。つまり、素晴らしい人々が暮らす北の大地、というアイヌへの尊敬を込めて名付けられた。

 歩くときは一日60km歩いたという健脚の持ち主であり、28~41歳の間に3度の蝦夷地踏査、幕府のお雇いの役人としてさらに3度、計6度の蝦夷の地を踏査している。

と、ここまでは本などで調べたら分かる内容だが、ここからが本日の所感。武四郎が旅に生き、膨大な記録を残した人物ということは認識していたが、いざその膨大な資料を目の当たりにすると圧巻である。その中でも地図や綿密な風景画に感動した。3次元で地形をとらえ、優れた空間認識能力と記憶力で再現された地図。風景画は飛行機に乗り、海から眺めたような角度から描かれた物だ。武四郎の交友録も幅広く、様々な人々から見た武四郎という人となりも興味深かった。

ある人は「うわさ以上で感服した」と。ある人は「悪人ではないが、了見が狭く疑り深く、お大げさに物事を語る」と。
吉田松陰をもってして「世の中の新しい情報を得ようと思えば武四郎と付き合うのが良い」と言わしめた程の情報通でもあったという。

特別展の目玉として、武四郎の大首飾りがある。収集した石製の玉を連ねた物で、唯一の肖像写真でも身につけているものだ。しかし、個人的にはそれをも上回る感動を覚えた展示物があった。岩橋 英遠という日本画家による「憂北の人」という屏風だ。武四郎の背景には大きな北海道の地図。それを囲むようにヒグマ、エゾジカ、そしてタンチョウが描かれている。まさかここでタンチョウと出会うとは思いもしなかった。鶴居村から見に来たことを誇りに感じた。

展示を見たあと、今回この機会を与えて下さった安藤氏に「(展示物の中で)北海道人、という字を見たか?」と尋ねられたが、答えられなかった。購入してきたパンフレットでどこか教えてもらったが、それはアイヌ舞踊・鶴の舞が描かれた風俗画だった。確かにそこには北海道人と書いてあった。それを教えてもらったとき、松浦武四郎氏と、安藤誠氏の北海道やアイヌへの慈愛と尊敬の眼差しが重なって見えたのであった。そういえば二人には共通点が他にもたくさんあるかもしれない。

開催期間がガイドシーズン真っ最中のため行くことは叶わないと諦めていたが、このような機会を下さった安藤夫妻に感謝。学び多き日帰り研修となった。

湿原の神

思わぬ事態に直面すると思考が停止する。今日のカヌーはまさにそれが起きた。湿原カヌー中、水辺に一匹のキツネが。湿原のど真ん中でだ。餌を探しているのだろうかウロウロしていた。我々の操船するカヌーが近づくと餌探しを止め、こちらを注意深く凝視しはじめた。お客様も突然訪れた邂逅に大喜び。
 
キツネはすぐに逃げると思いきや、カヌーが寄ったところで逃げる気配がない。2枚めの写真はキツネがカヌー先頭に乗るお客様を凝視している様子だ。結局2mくらい接近したところでようやく葦原の茂みの中へ。それでもまだ我々のことを観察している。見ていたつもりが実は見られていた。野生の目に我々ニンゲンはどう映っているのだろうか。
 
この目、たたずまい、貫禄。湿原の神様に会った気分だ。感謝。
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僕たちは漂流物

僕たちは漂流物。水の上を音も無く滑る。川を下るだけでなく、ときには川上りをして釧路川の支流を旅する。

川縁で一匹のメスジカと出会った。カヌー上から様子を見ていたがこちらに臆することもない。少しずつ近づく。ヨシ原の奥に子ジカの姿も見えた。その後僕たちのほうを一瞥し、何事も無かったように食事を続ける。

シカたちの移動に合わせてカヌーで川を下る僕たちはまるで漂流物。ただカヌーをしに行くだけでなく、ネイチャーガイドがカヌーを操船するとこんな体験ができることもある。

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丘の上のミズナラ

イギリスはマンチェスターの郊外から来たご夫婦を湿原へガイド。お二人の歳は六十代前半。ハイスクール時代に出会い、通った大学も同じ。その後、途切れることなく付き合い続け、結婚。以来、44年間も一緒にいるのよ!と仰っていた。

世界中からやってくるゲストの人生の1ページに関わらせていただく。会話の中で見えてくるその人々の人生哲学。自分の倍以上生きている人、自分の半分も生きていない人、歳は関係なくやはり自分の人生に真摯に向き合って来た人々から学ばせてもらうことがたくさんある。

足場の悪い場所、斜面で妻をさりげなくフォローする夫。トレッキング中、立ち止まっては寄り添い肩を並べて景色を眺めていた。帰り道、少し離れてお二人の様子を眺めていると二人の背中から信頼という二文字が見えてきた。丘の上からミズナラが二人を優しく見守っていた。

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手紙について

手紙について。先日、こんなことがあった。親子三代でお泊まりに来たご家族。二泊三日の旅のあと、旅の発案者である祖父母からご丁寧なお礼状が届いた。そして、母、そしてお孫さんからも別々でお手紙が届いた。

同封すれば一度で済むものを三つに分ける。おそらく一家としてそういう方針なのであろう。手間をかけることで、さらに伝わる気持ちもある。今の時代、メールで簡単に済ますことができるが(メールが悪いわけではない)、ヒッコリーウィンドにはお手紙がよく届く。

それはきっとオーナー夫妻のガイドや気持ちのこもった料理、お気遣いなどがお客様の心に響いているからに違いない。さあ、今日もお客様をお迎えする準備をしよう。

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星空カヌー

昨夜は星空カヌーへ行って来た。時間が遅いほど降水確率が高くなるため、通常は夕食後にガイドへ出発だが、昨夜は夕食前に出発。ベストを選択し、臨機応変に対応する。

カヌーの現場へ到着すると、星は見えず。空は厚めの雲に覆われていた。星空カヌーの醍醐味はもちろん「満天の星空」であるが、同時に味わってほしいのは非日常的な「静寂」と「真の暗闇」である。静寂はお金では買えない。そして、ここは街のネオンサインとは無縁の世界だ。

あまりに月明かりが強烈なため月光が分厚い雲を突き抜け、夜と言えども視界は良好。水辺に自分たちの乗るカヌーの影も映る。BGMはエゾアカガエルの大合唱。不思議なもので時折、ずーっと鳴いていたカエルたちの合唱が突然に止む。そして誰からともなく歌い始めて大合唱が起こる。そのサイクルは不定期に繰り返され、歌声が止む度に訪れる静寂に息を飲んだ。

 奇跡というものは不意に訪れる。空の一部が明るみ始めた。雲の隙間から不明瞭な月が姿を現した。一瞬だけ空全体を照らしたかと思うとまた雲の影へ。そして気まぐれにまた顔を覗かせる。湖面に光が注がれた。月が映り込んだのだ。今度は雲に隠れることはなかった。

そして最後の最後に雲の隙間を縫うようにして星も現れた。今回、星空カヌーにやってきた男性2名は中学、高校の学生時代をともにした仲間という。2人の間に流れる空気。友情、信頼、そういうものが言葉にしなくても感じられた。そんなおふたりにthe Great Bear(おおくま座)、すなわち北斗七星をプレゼントしたかった。「揺るぎない信頼」という意味があるからだ。今回は北斗七星は見ることが出来なかったが、それは次回のお楽しみに。私も含めて男3人で見るロマンチックな星空に最後は誰も口を開くことはなく、我々は静寂の森に包まれていた。

道元禅師の教え

昨日は知床方面へ。産卵を控えたサクラマスが遡上する川、岩の上に立つオジロワシ、ヒグマの親子(最後の最後に茂みの中で師匠が発見!never give up精神で見つけていた)、名湯・熊の湯、締めはシマフクロウ。関東から初めて北海道に来た方もいらっしゃり、初めて見る動物たちに皆ワクワクしっぱなし。

スマートフォンや、デジカメをお借りして、スワロフスキーのスコープで写真を撮る、撮る、撮る!皆お持ち帰りしていただける写真がカメラに収まり、大満足していただけた様子。知床の魅力満載の動物たちのオンパレードにも関わらず、自分のスマホには昨日の写真はこの一枚のみ。しかし、この青空のように気持ちは晴れやかである。

ネイチャーガイドとして自然のことを学んでいるが、なんのために学ぶかを理解しないとブレてしまう。自未得度先度他 ( じみとくどせんどた )。「自分が道を渡るより先に、ほかの人を渡らせましょう」ということで、つまり「自分が得ていないものを、まず先に他人に得てもらおう」の意。曹洞宗 道元禅師の教えである。そういうことを日々、学ばせてもらっている。

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神様ギツネの末裔

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人間が使うトレッキングルートは動物たちにとっても歩きやすい道。キタキツネ、エゾタヌキ、エゾジカたちも利用する。ある日、釧路湿原を歩いているとミヤコザサの影から立派な尻尾がピョコンと見えた。その赤茶色のモコモコした塊はロケット花火のようにビューン!と飛んだ行ったかと思えば、ときには忍者のように忍び寄り慎重に獲物に近づく。静と動を繰り返し、見ている我々を飽きさせない。

我々が「神様ギツネ」と呼ぶ湿原の神様だ。人の視線や存在にも意に介さず悠々と歩く。ある一定の距離までは逃げない。かと言って、人間に近寄りエサをねだる事もない。今まで何度も姿を現して楽しませて、ガイドを助けてくれた。

キタキツネは大きく分けて2種類いる。ひとつは人間が餌付けをしてしまったため人や車の姿を見ると近寄ってくる「おねだりギツネ」。もう一方は人間の姿を見ると警戒し逃げるキツネ。しかし、釧路湿原のヒトはどちらにも当てはまらない。

狩りの最中、突然我々の目の前に仁王立ちした瞬間を撮らせてもらった。例の神様ギツネと思っていたが若い気もした。その夜、ミーティング中に師匠に写真を見てもらった。すると「神様ギツネの子孫だ」と。凛とした立ち姿。振る舞い。そして澄んだ目。オーラは継承されている。

最後に我々を一瞥したあと真横を通り過ぎて、ミヤコザサの中へと消えて行った。神様ギツネと束の間の心の交流が出来たのかもしれない。その背中を見送りながら、私は胸の奥に流れる何か温かいものを感じた。

 

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