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人間が使うトレッキングルートは動物たちにとっても歩きやすい道。キタキツネ、エゾタヌキ、エゾジカたちも利用する。ある日、釧路湿原を歩いているとミヤコザサの影から立派な尻尾がピョコンと見えた。その赤茶色のモコモコした塊はロケット花火のようにビューン!と飛んだ行ったかと思えば、ときには忍者のように忍び寄り慎重に獲物に近づく。静と動を繰り返し、見ている我々を飽きさせない。

我々が「神様ギツネ」と呼ぶ湿原の神様だ。人の視線や存在にも意に介さず悠々と歩く。ある一定の距離までは逃げない。かと言って、人間に近寄りエサをねだる事もない。今まで何度も姿を現して楽しませて、ガイドを助けてくれた。

キタキツネは大きく分けて2種類いる。ひとつは人間が餌付けをしてしまったため人や車の姿を見ると近寄ってくる「おねだりギツネ」。もう一方は人間の姿を見ると警戒し逃げるキツネ。しかし、釧路湿原のヒトはどちらにも当てはまらない。

狩りの最中、突然我々の目の前に仁王立ちした瞬間を撮らせてもらった。例の神様ギツネと思っていたが若い気もした。その夜、ミーティング中に師匠に写真を見てもらった。すると「神様ギツネの子孫だ」と。凛とした立ち姿。振る舞い。そして澄んだ目。オーラは継承されている。

最後に我々を一瞥したあと真横を通り過ぎて、ミヤコザサの中へと消えて行った。神様ギツネと束の間の心の交流が出来たのかもしれない。その背中を見送りながら、私は胸の奥に流れる何か温かいものを感じた。