The Northern Spirits

北に未来あり

月別: 2018年8月

星空カヌー

AM5:00から始まったガイドは、先程AM0:00過ぎに終わった。HICKORY WINDは本日、釧路湿原国立公園、知床国立公園、阿寒摩周国立公園の3つの国立公園をガイドした。師が知床へ、私は部屋掃除・草刈りなど、ときには別れたりしてそれぞれのポジションで役割を果たした。

その中でも星空カヌーについて今日は書かなければならない。

なぜなら、操船せずに前方に「お客さん」として乗せてもらったからだ。カヌーの定員は「人数」で決まるのでは無い。「バランス」と「総重量」だ。そして、どのタイプのカヌーを使用するかによって変わってくる。本日使用したのは撮影や釣りなど特に安定性が求められる際に使用する艇である。

操船する人を含め、4人でカヌーへでかけた。乗り込むポジションは先頭からお客様、2番目に私、3番目に安藤氏、そして最後尾で操船するのは山田佳奈。いつもは操船し、お客様をガイドする立場なので前方2番目に乗れることなんてそうそう無い。お客様目線でガイドを体験するという貴重な機会となった。カヌーを水辺に浮かべる。まずはじめに水辺では安藤氏が長時間露光で数枚シャッターを切る。素晴らしい写真だ。

いつのまにかカヌーは陸を離れていた。月の輝きを雲が覆っていたため、出艇したとき星はひとつもない漆黒の闇。あまりの暗さに陸と水辺の境界線だけでなく、自分と世界の境界線すら曖昧になり、暗闇の中に溶け出しそうな感覚になる。強く吹いていた風は止み、湖面がピタッと停止して鏡面となる。そうすると湖面にエゾマツやトドマツたち、森がくっきりとシンメトリーに映り込む。空と湖面の境界線すら曖昧になりカヌーはまるで宇宙を漂う漂流物だ。

寒さについても触れておく。カヌーをする頃の気温は14℃だった。服装は以下。
・半袖Tシャツ
・長袖のシャツ
・半袖ダウンジャケット
・長袖ダウンジャケット
・ゴアテックスのジャケット

本州だと考えられないだろう。

カヌーは闇の中を漂う。ふと背後に気配を感じた。振り返ると、そびえ立つ黒い影。後ろから山が我々のカヌーを見下ろしていたのだ。

さらに奥へとすすむ。星が無いはずなのに、なぜか湖面に何か光るものが映り込んだ。

蛍だ!

このあたりの蛍はヘイケボタルだ。発光はあまり強くなく、ゆれるような光を約1秒発する。オスは7日間、メスは10日間のみ活動する。完全に光の無い闇夜では蛍の一筋の光がいっそう際立つ。遠くからでもそこに蛍がいると分かる。

その優しい光を見ていると、気持ちまで優しくなれた。さらに艇は進み入江に入っていく。徐々に迫りくる森。アカエゾマツ、エゾマツ、トドマツたちの巨大なシルエットが今にも倒れてこちらに覆いかぶさってきそうだ。

ここは「森の美術館」と呼んでいるところだ。どんなところにいるのか確認するため、一瞬だけヘッドライトを点けてみる。真っ黒クロスケだった巨大なモンスターのような影たちが、命が吹き込まれたように姿を現した。美しい針葉樹林たち。倒木は湖面に映り込み完全なシンメトリーを演出。

日中はここに上陸してトレッキングをすることもある。この奥に素敵な小川がありシマフクロウが魚を捕りに来るのだ。

師が肩を叩く。何か合図している。指が指す方向に目をやると丸くて黄色い光が空に浮かぶ。月だ。舳先をそちらへ向ける。松の隙間を縫うようにして、月明かりが湖面に光を注ぐ。それはゆらゆらと揺れて、凝視すると脳みそを揺さぶられる感覚に陥った。気づけば火星が空に燦然と輝いていた。強風に煽られて薄くなった雲の隙間から、いつの間にか星々が顔を覗かせていた。満天の星空も素晴らしいが、こんなドラマチックな演出の方が印象に残るものだ

I’m not Japanese.I’m Hokkaido man!!

俺は日本人ではない。北海道人だ。

それを聞くと外国人旅行者は必ず笑う。師匠の持ちネタだ。もちろん笑わせるためもあるが、あながち冗談でもない。敢えて日本人としないことで、北海道に住んでいる事へのアイデンティティ、そしてプライドを示すための有効な表現方法だ。
同じ文字を北海道博物館でも目にした。松浦武四郎だ。アイヌの群舞を描いた、とある一枚の掛け軸に「北海道人」という言葉があった。そこに師匠も感銘を受けていた。

さらに、何度も訪れていた場所で「北海道人」という文字が最近になり初めて目に飛び込んで来た。意識しないとうっかり見落としてしまうものだ。

それは阿寒町にある「釧路湿原美術館」での事。そこは佐々木縈松(えいしょう)さんという画家の作品を展示するため2013年に設立された美術館だ。

展示の冒頭で縈松さんの挨拶文を読むことができる。そこにはこうあった。

「青年期の後半から【日本人の油絵を描く】ことに主義をおいた。さらに日本人の中の北海道人の作品、そしてさらに北海道の中でも東方人であると自らを確信づけた。」

ここでも北海道人という言葉が登場する。

さらに縈松さんは自らを東方人とまで限定して謳っている。道東に住まうことへのプライドを感じる。安藤氏の写真のルーツのうちのひとつでもある佐々木縈松さんの作品に触れたことのない方は、ぜひ美術館を訪れてほしい。湿原を熟知し、風土や人物、動植物の「命の描写」をテーマに、自然界の摂理と輪廻を美しく描写した作品群。北海道生まれの北海道人であるあなた、特に釧路人には心に響くものがあるはずだ。

釧路湿原美術館
http://shitsugenmuseum.sakura.ne.jp

HICKORY WIND web site
https://www.hicorywind.jp

帰宅後10秒にBBQ

昨日から鶴居村で留守を預かっている。今日は朝からひとりで朝食準備、そしてガイドへ。

オーナー夫妻は東京で行われた授賞式から一夜明けて本日は写真展の会場に立ち、来場者の方々をお迎えしていた。そして夕方のフライトで東京を発ち釧路空港へ戻ってきた。

時を同じくしてその頃、鶴居村では夕食の準備。外でBBQだ。ウッドデッキにテーブルと椅子をセットし、炭を使用して火起こし。炭火焼きのBBQは格別だ。東京から帰宅したオーナー夫妻。ひと息いれる間も無く、帰宅後10秒にBBQスタート。
写真も撮るしガイドもする。そしてあるときは焼き鳥屋の店主。お客様はもちろん大満足。

HICKORY WIND ーweb siteー
http://hickorywind.jp/

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